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教育・家計の公開データ分析 · 分析記事

学習費は総額だけで比較しない。

要旨

公立・私立の差を、費目・学年・学校所在地の人口規模に分けて検証。全国平均だけでは分からない支出の違いを確認し、教育サービスの企画で追加確認が必要な条件まで整理しました。

· 対象:2023年度/2026年1月16日訂正版

公式公開集計の二次分析です。査読論文・受託実績・個人や物件への予測ではありません。

改訂:学校所在地の人口規模別分析・公私比較表・資料3形式を追加(2026年8月31日)

研究上の問い

公立・私立の学習費差は、どの費目・学年・学校所在地の条件から生まれ、総額だけでは何が隠れるのか。

対象データと方法

対象:2023年度/2026年1月16日訂正版。公式資料を確認し、数値の分母・単位・時点をそろえました。因果推定に必要な条件がない場合は記述分析に限定しています。

分析方法の確認

103機能の実行結果

実行確認済み
103

103機能を全件監査し、60機能を原表の再計算・別実装照合・頑健性・感度・可視化・用語監査へ適用しました。43機能は前提不成立の理由を保存しています。

別の説明もできるか

  • 総額差は授業料だけでなく学校外支出も含む
  • 公私差は個人属性を統制した因果効果ではない

結果|会議で先に共有する3点

  1. 公立小学校では、学校外活動費が約70%。

    年間平均36万6,599円のうち25万6,489円。授業料だけを見ても、家庭が負担する学習費の全体は分かりません。

  2. 公私差の中身は、学校段階で変わる。

    私立-公立の差に占める学校教育費は、小学校65.7%、中学校96.0%。同じ「公私差」でも、着目する費目が違います。

  3. 人口規模別の差も、学校外活動費まで分ける。

    公立小学校の総額は10万人未満29万5,218円、100万人以上・特別区45万6,768円。学校所在地の比較で、家庭の居住地や教育効果の差ではありません。

学校段階を選び、公私差の中身を比べる

総額と費目別の差を同時に確認できます。給食費のマイナスや調査対象外も、そのまま表示します。

一人当たり年間平均・円。差は私立-公立。転校した場合の追加費用ではありません。

小学校 · 2023年度の公式集計
費目・区分公立(円)私立(円)私立-公立(円)
学習費総額366,5991,741,5161,374,917
学校教育費74,336978,271903,935
学校給食費35,77453,57817,804
学校外活動費256,489709,667453,178

出典:文部科学省・2023年度子供の学習費調査 表1(2026年1月16日訂正)。異なる在籍者集団の平均です。高校の学校給食費は0円ではなく調査対象外。

図1 公私差と費目構成

8区分の年間平均を同じ金額軸で比較。私立小学校174.2万円、公立小学校36.7万円。
文科省の訂正後の表1を再集計。単位は子供一人当たり年間平均・万円。高校の給食費は調査対象外で、0円という意味ではありません。

図2 公立学校の学年別パターン

公立小学校・中学校・全日制高校の学年別総額と学校外活動費。全図の縦軸は0〜80万円。
同一年度の異なる学年集団を比較。線は読みやすさのために結んでおり、個人の成長や支出の変化を追跡したものではありません。

図3 学校所在地の人口規模別・費目構成

公立小学校と公立中学校を人口規模4区分で比較する積み上げ棒グラフ。小学校の総額差16万1550円、中学校12万4586円。
2校種×4区分の年額平均。人口は学校所在地の市町村で、家庭の居住地ではありません。図の区間表記は下限以上・上限未満。中学校は人口規模順の単調増加ではなく、利用率や学習成果の差も表していません。

1.問い:何に、いつ支払っているのか

文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」の学校種別表と学年別表を再集計しました。対象は公立・私立の幼稚園、小学校、中学校、全日制高校。年間の子供一人当たり平均額で、学校の授業料表や個々の家庭の必要予算ではありません。2026年1月16日の訂正を反映した原表に統一しています。 標本調査から復元推計された平均で、回答者を単純に平均した値ではありません。

分析を①学校内外の構成、②公私差の費目分解、③学年ごとの支出の山、④学校所在地の人口規模別の差、に分けました。各集計の対象を混ぜず、教育サービスの企画や説明資料で、誰に何を追加確認するかを具体化します。

2.総額より先に、学校外活動費の意味を確かめる

公立小学校では学校外活動費が学習費総額の70.0%、公立中学校では65.6%です。ただし、これは公表された平均費目額を平均総額で割った比率です。「平均的な家庭が70%を学校外に使う」という個人別比率の平均ではありません。

学校外活動費には学習塾に加えて、家庭内学習、家庭教師、芸術・スポーツなどの活動が含まれます。したがって「塾代が70%」とは言えません。学習支援の企画では、活動別の内訳、利用の有無、支出ゼロを含む分布を先に確認します。大きな費目は調査の優先順位を示しますが、削減余地やサービス需要をそのまま示すわけではありません。

3.公立・私立の差を、費目ごとに分解する

小学校の年間平均は公立36万6,599円、私立174万1,516円で、差は137万4,917円です。そのうち学校教育費の差は90万3,935円、学校外活動費の差は45万3,178円、給食費の差は1万7,804円。学校教育費が差全体の65.7%を占めます。

中学校では差101万7,909円に対し、学校教育費の差が97万7,300円で96.0%。給食費の差はマイナス2万6,354円です。費目によって差の方向が異なるため、総額の倍率だけで仕組みを説明すると情報が落ちます。また、公私の在籍者は所得・地域などの条件が同じではありません。この差を「同じ子が転校した場合に増える金額」と扱うこともできません。

4.学年別の山は、予算説明の順番を変える

公立小学校と公立中学校の学習費総額は最終学年が最大でした。ただし、公立全日制高校は1年が最大です。図の学校外活動費を見ると、公立全日制高校では学年が上がるほど高い平均になっています。総額の動きと学校外活動費の動きが一致するとは限らず、入学時の費用と継続的な学習活動を分けて説明する意義があります。

ただし図は、2023年度に在籍した異なる学年集団の比較です。同じ子供を追跡した結果ではなく、翌年の増減や現在の料金を予測していません。実務では、この図で支出時期の仮説を置き、地域の募集要項、費用明細、利用者調査で確かめる、という順序が適切です。

5.地域規模:学校所在地で比べると何が変わるか

公立小学校の年間平均は「10万人未満」で29万5,218円、「100万人以上・特別区」で45万6,768円。最大最小の差は16万1,550円、倍率は約1.55倍です。公立中学校は47万9,515円と60万4,101円で、差12万4,586円、約1.26倍でした。4区分のうち中学校は中間区分で総額が下がるため、人口が大きいほど一様に増える関係ではありません。

これは在籍校の所在市町村による集計です。家庭の居住地別、都道府県別、指定都市別の集計ではありません。原表の4区分は重複せず、「100万人以上・特別区」を旧調査の「指定都市・特別区」に置き換えません。全国平均も、4区分の平均を単純平均した値ではありません。

6.差への影響が100%を超える理由

小学校で最大・最小総額の2区分を比べると、学校外活動費は17万749円高いものの、学校教育費は7,693円、給食費は1,506円低く、合計差は16万1,550円になります。学校外活動費差÷総額差は105.7%です。中学校も学校外活動費の差14万1,178円を他費目の負差が相殺し、影響は113.3%になります。

これは支出構成比ではなく、二つの平均の差の算術分解です。100%を上限に切ったり、費目の負差をゼロへ直したりすると、総額との一致を失います。なお、地域規模そのものが支出を増やしたとは言えず、所得、活動価格、サービスの供給、学年構成などの交絡は未調整です。

7.考察:総額を提示する資料から、確認項目を示す資料へ

この再集計から直接言えるのは、費目構成と学年別の平均が一様ではないことです。教育サービスを提案する会議なら、「学校外」のどの活動を対象にするか、対象学年はどこか、既存の負担を置き換えるのか追加するのか、の三点を先に決める材料になります。

地域規模別の平均だけでは、活動の利用率、支出ゼロの割合、利用した家庭の支払額を分けられません。所得階層別は公表資料間の標準誤差欄の一致を確認し終えていないため主分析から除外しました。家計の背景を調整した効果、所得差の有意性や信頼区間は、この資料では示していません。

会議で何を確認するか

以下は分析結果を踏まえた調査提案です。実施済み施策や効果の実証ではありません。

教育サービスの企画会議

確認できたこと
学校外活動費の平均は、学校段階と地域規模で異なります。
次の調査
対象学年・活動を絞り、利用の有無、利用者単価、既存サービスの代替か追加かを調べる。
判断前の条件
平均額×対象人数を、そのまま市場規模にしない。ゼロ支出と価格・利用頻度を分ける。

学校・自治体の支援検討

確認できたこと
学校所在地の区分差で、家計の居住地や困窮の度合いは直接分かりません。
次の調査
居住地域、所得階層、参加状況、移動時間の情報を、個人が特定されない集計で照合する。
判断前の条件
有効回答数を母集団人数と混同せず、標本設計と欠測・無回答の偏りを確認する。

家計向け説明資料の編集

確認できたこと
総額の学年ピークと学校外活動費の動きは必ずしも一致しません。
次の調査
入学時、年度内の定期支出、学年末の活動を分け、現在の費用明細を集める。
判断前の条件
2023年度の平均を現在の価格表や個別家庭の必要予算として提示しない。
原数値:学校種別の年間平均を開く

地域・学校種の名称は原表の日本語で表示しています。

原数値:学校種別の年間平均を開く
区分学習費総額(円)学校教育費(円)給食費(円)学校外活動費(円)
公立幼稚園184,64669,36215,235100,049
私立幼稚園347,338154,06235,741157,535
公立小学校366,59974,33635,774256,489
私立小学校1,741,516978,27153,578709,667
公立中学校542,450150,76135,671356,018
私立中学校1,560,3591,128,0619,317422,981
公立高等学校(全日制)596,954351,523対象外 / out of scope245,431
私立高等学校(全日制)1,179,261832,650対象外 / out of scope346,611

すべて一人当たり年間平均。CSVには学校種8区分と学年30区分を収録。両区分を合算して全国総額にすることはできません。

方法|実行した方法と、使わなかった方法

openpyxl
公式Excelの指定シート・セルを再読込し、抽出仕様と照合。
pandas
学校種・学年ごとの整形と集計。欠測と調査対象外を区別。
Polars / DuckDB
別の集計エンジンで行数・数値チェックサムを照合。チェックサムは全国値ではない。
NumPy
比率、構成差、丸めだけに由来する算術的な境界を計算。
Matplotlib
同じ単位・軸で日本語と英語の図表を出力。

この分析の限界

  • 2023年度の名目平均額です。2026年度の実費、制度変更の効果、個別家計の必要額には置き換えられません。
  • 国立学校、保育所、高校の定時制・通信制等はこの比較に含みません。高校の給食費は調査対象外です。
  • 費目構成比は公表平均の比です。個人別比率の平均、中央値、分布のばらつきは推定していません。
  • 学校種や学年の差は記述的な比較です。家庭背景をそろえた因果効果ではありません。
  • 標本設計の分散共分散を再構成できないため、独自の有意差検定・信頼区間・将来予測は付けていません。円単位の丸め境界は標本誤差ではありません。
  • 人口規模別は公立小学校・中学校の学校所在地4区分に限定。平均の差は利用率・教育効果・居住地の格差を識別しません。説明率100%超は他費目の負差の相殺によるもので、異常値ではありません。

公式出典と再現資料

原表を保存し、URL・訂正日・SHA-256、変換手順、使用機能、限界を記録しています。表示値の丸めと、原表の丸めによる差を区別しています。

結論

学習費の総額は出発点で、説明の終点ではありません。費目、学年、学校所在地を分けると、公私差や支出ピークの中身が変わります。教育サービスの企画では、2023年度の全国平均を現在価格や個別家計へ置き換えず、参加、価格、頻度、所得・地域条件を追加確認する必要があります。