データ分析へ

不動産・地域の公開データ分析 · 分析記事

空き家率だけでは、地域の課題は選べない。

要旨

空き家の戸数、総住宅に対する率、空き家の中の構成比を分ける。全国・47都道府県の比較に、似た空き家率でも内訳が異なる地域の対照と、住宅地価との探索的な照合を加えました。

· 空き家:2023年確報/地価:2026年公示

公式公開集計の二次分析です。査読論文・受託実績・個人や物件への予測ではありません。

改訂:全国・47都道府県の構成比較・会議の確認項目・資料3形式を追加(2026年8月31日)

研究上の問い

空き家の戸数・総住宅に対する率・空き家内の構成を分けると、地域課題の優先順位と地価との関係はどう変わるのか。

対象データと方法

空き家:2023年確報/地価:2026年公示。公式資料を確認し、数値の分母・単位・時点をそろえました。因果推定に必要な条件がない場合は記述分析に限定しています。

分析方法の確認

103機能の実行結果

実行確認済み
103

103機能を全件監査し、59機能を原表の再計算・別実装照合・頑健性・感度・可視化・用語監査へ適用しました。44機能は前提不成立の理由を保存しています。

別の説明もできるか

  • 空き家率と地価の相関は地域規模・用途・都市性を混ぜる
  • 空き家の種類構成によって同じ総空き家率でも意味が異なる

結果|会議で先に共有する3点

  1. 全国の空き家率13.8%と、用途を除いた5.9%は別の指標。

    空き家900万1,600戸のうち、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家は385万6,000戸。どちらの率も分母は総住宅6,504万6,700戸です。

  2. 東京都は空き家戸数1位、除く空き家率では47位。

    東京都は89万6,500戸ですが、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率は2.6%です。戸数の大きさだけを、住宅の使われにくさと解釈できません。

  3. 地価との負の相関は、東京だけでは説明されない。

    47県の順位相関は−0.645、東京都を除いても−0.622。ただし別年の地域集計を合わせた探索的比較で、因果関係や個別物件の価格予測ではありません。

地域を選び、空き家の種類を全国と比べる

「総住宅の何%か」と「空き家のうち何%か」を分けました。全国列も分母は全国の空き家総数です。

総住宅 8,201,400戸/空き家 896,500戸。内訳と空き家総数の丸め残差 -100戸。

東京都 · 2023年の公式集計
費目・区分戸数総住宅に対する率(%)空き家内の構成比(%)全国の空き家内構成比(%)
賃貸用の空き家629,0007.770.249.3
売却用の空き家43,8000.54.93.6
二次的住宅9,6000.11.14.3
賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家214,2002.623.942.8

出典:2023年住宅・土地統計調査 確報・主要統計表1。小数1桁表示のため合計は100.0%と一致しない場合があります。残差は補正しません。賃貸用は現在募集中の物件数、除く空き家は危険住宅数と同義ではありません。

図1 同じ分母で、二つの空き家率を比較

賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率が高い10県について、空き家全体の率と比較。
どちらも分母は総住宅数。濃色は賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率で、危険な住宅の割合ではありません。棒は再計算値で並べ、表の順位は小数第1位の同率を保持しています。

図2 空き家の構成と、後年の住宅地価変動

2023年の除く空き家率と2026年住宅地変動率を47都道府県で照合した散布図。順位相関は約マイナス0.645。
都道府県が1点。別年・別対象の探索的比較です。回帰直線や価格予測を置かず、東京都除外・1県ずつ除外・表示丸めで感度を点検しました。

図3 空き家内の構成を、地域で比較

全国、東京都、大阪府、鹿児島県、山梨県の空き家4分類の積み上げ棒。賃貸用、売却用、二次的住宅、それらを除く空き家の順。
分母は各地域の空き家総数。戸数や総住宅比とは別の指標です。4都府県は構成の対比用に選択し、全47都道府県は比較表・CSVへ収録。原表の丸め残差を100%に正規化していません。

1.同じ「空き家」でも、数えている状態が違う

総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」の確報を使い、全国と47都道府県を再集計しました。空き家には賃貸用、売却用、二次的住宅、それらを除く住宅が含まれます。募集や利用の途中にある住宅と、それ以外の住宅を一つの数字だけで説明しないことが出発点です。

全国の空き家は900万1,600戸。そのうち賃貸用443万5,800戸、売却用32万6,200戸、二次的住宅38万3,500戸、これらを除く住宅385万6,000戸です。公表戸数の内訳合計と総数には、丸め等による100戸の不一致があります。内訳を無理に補正せず、元の値と残差を保存しました。

2.規模と比率を分けると、優先順位が変わる

空き家戸数では東京都89万6,500戸、大阪府70万1,900戸、神奈川県46万7,100戸が上位です。総住宅数に対する「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の比率では、鹿児島県13.6%、高知県12.9%、徳島県・愛媛県12.2%が上位になります。小数第1位が同じ徳島・愛媛は同率3位としました。

東京都は、この除く空き家率が2.6%で47位です。絶対数を使うと対象ストックの規模を、比率を使うと住宅全体に対する構成を見やすくなります。ただし、いずれも事業の市場規模や支援対象戸数を直接示す指標ではありません。所有者の意向、状態、立地、利用条件を確認して初めて、実際の候補に絞れます。

3.似た空き家率でも、内訳は同じではない

山梨県と鹿児島県の総空き家率は20.4%と20.5%で近いですが、空き家のうち二次的住宅が占める比率は19.6%と2.4%です。総住宅を分母にすると、この二次的住宅の率は4.0%と0.5%。分母を変えるだけで数値の意味が変わるため、どの割合を比較しているかを毎回示す必要があります。

東京都では賃貸用が空き家の70.2%、鹿児島県では賃貸・売却用及び二次的住宅を除く住宅が66.3%です。二次的住宅には別荘に加えて、普段の住まいと別に時折寝泊まりする住宅も含みます。この対照は分類の違いを説明する選択例で、全国を二つの型に分けるモデルではありません。全47都道府県は上の比較表とCSVで確認できます。

4.全国戸数への影響と、地域内の構成を混ぜない

総空き家戸数の上位5都道府県は東京都・大阪府・神奈川県・北海道・愛知県で、合計295万400戸。全国900万1,600戸の32.8%を占めます。これは戸数がどこに集中しているかを表す記述で、対策費用、危険性、収益性の32.8%という意味ではありません。

全国の空き家内構成は賃貸用49.3%、売却用3.6%、二次的住宅4.3%、それらを除く住宅42.8%です。全国値は全国原表を分母とし、都道府県構成比の単純平均では求めません。元の戸数の丸めと表示の四捨五入により、地域の4分類合計が100.0%からずれても、特定分類へ差を足して補正しません。

5.住宅地価との照合で、どこまで言えるか

2023年の除く空き家率を、国土交通省「令和8年地価公示」第5表の2026年住宅地の平均変動率と都道府県単位で結合しました。全国行を除く47県について、順位関係を見るSpearman相関は−0.645、直線的な関係を見るPearson相関は−0.698でした。除く空き家率が高い県ほど、住宅地の変動率が低い傾向が、この組合せでは見られます。 各都道府県を等しい重みで扱っており、全国の住宅を等しい重みで扱う分析ではありません。

東京都を除くと順位相関は−0.622。1県ずつ除く47通りでは−0.680〜−0.622で、小数第1位に丸めた空き家率でも−0.648でした。単一の県や表示の細かさだけで相関の符号が変わるわけではありません。ただし、この安定性は因果推論の根拠ではなく、選んだ二つの指標間の記述的な点検に限られます。

6.相関から物件価格へ飛躍しない

空き家は2023年10月1日時点の住宅ストック、地価は2026年公示の継続標準地の変動率です。対象物も時点も異なります。人口構成、都市集積、交通利便性、住宅の築年数、観光需要などを調整していないため、「空き家が地価を下げた」「地価が上がれば空き家が減る」とは言えません。

都道府県の内部には中心市街地、郊外、山間部などが混在します。県単位の傾向を個別市町村や物件へ適用するのは集計単位の飛躍です。今回の散布図は候補地域の追加調査に使うもので、購入・売却の推奨、査定、投資収益率の推計には使いません。

7.実務への示唆:戸数で入口を、状態で候補を絞る

会議では、まず目的を分けます。相談窓口や調査体制の検討なら戸数、地域内での住宅利用の構成を見るなら比率、活用策の検討なら空き家の種類と状態が重要です。どの県が「良い・悪い」と決める順位表ではありません。追加で必要な情報を決めるための表です。

次段階では同じ市町村コード・調査年にそろえた人口変化、世帯構成、建築時期、接道・交通条件を検討します。取得できない情報は欠測として残し、無理に県平均で埋めません。条件がそろった地域に範囲を狭めてから、自治体資料や実際の募集・成約情報との対応を確かめる設計です。

会議で何を確認するか

以下は分析結果を踏まえた調査提案です。実施済み施策や効果の実証ではありません。

空き家調査の企画会議

確認できたこと
戸数の集中と、空き家内の種類構成は違う問いです。
次の調査
まず調査の対象戸数を確認し、賃貸用・売却用・二次的住宅・それらを除く住宅に分けて追加資料を集める。
判断前の条件
2023年の推計戸数を、現在募集中の物件数や受注可能件数と呼ばない。

地域活用・管理の検討

確認できたこと
似た総空き家率の地域でも、二次的住宅などの構成が異なります。
次の調査
同じ市町村コード・調査時点で、建築時期、利用状況、所有者の意向などを確認する。
判断前の条件
分類だけで危険住宅・放置住宅と判定しない。欠測を県平均で埋めない。

不動産事業の地域調査

確認できたこと
空き家と後年の地価に地域相関がありますが、因果と査定は未推定です。
次の調査
対象を狭め、物件種別・時点・面積・築年・立地がそろう募集・成約情報を調べる。
判断前の条件
都道府県相関を物件価格予測や購入順位へ変換しない。
原数値:47都道府県の比較表を開く

地域・学校種の名称は原表の日本語で表示しています。

原数値:47都道府県の比較表を開く
都道府県空き家戸数全体の率(%)除く率(%)戸数順位除く率順位2026住宅地変動率(%)
北海道451,90015.65.64380.6
青森県98,80016.79.331150.2
岩手県100,40017.39.330150.3
宮城県140,30012.44.624402.8
秋田県69,50015.8104180.7
山形県61,70013.57.943230.2
福島県131,00015.27.325300.4
茨城県196,20014.16.713331
栃木県163,70016.96.61634-0.2
群馬県161,30016.77.617270
埼玉県330,4009.33.89452
千葉県394,10012.356394.6
東京都896,50010.92.61476.5
神奈川県467,1009.83.23463.4
新潟県155,30015.37.61927-0.5
富山県69,70014.78.440210.2
石川県86,40015.67.336300.9
福井県53,10015.68.546200
山梨県87,20020.48.73518-0.3
長野県208,50020.18.912171.2
岐阜県148,40016.18.12022-0.2
静岡県296,30016.75.910370
愛知県433,00011.84.35431.8
三重県142,70016.39.522140.4
滋賀県81,60012.37.338300.9
京都府180,40013.16.215352.3
大阪府701,90014.24.62402.8
兵庫県386,90013.86.27352.2
奈良県93,60014.67.73225-0.1
和歌山県105,30021.212.1295-0.6
鳥取県41,30015.79.747110
島根県54,6001711.3446-0.4
岡山県157,20016.58.618190.9
広島県231,40015.87.811241.5
山口県140,70019.411.12370.7
徳島県83,00021.312.2373-0.5
香川県91,50018.69.73311-0.1
愛媛県145,60019.812.2213-0.4
高知県78,70020.312.9392-0.2
福岡県335,30012.44.68403.7
佐賀県53,30014.57.745252.9
長崎県113,00017.39.92891.2
熊本県127,10014.97.626272.8
大分県115,50019.19.627132.8
宮崎県90,70016.39.93490.6
鹿児島県184,20020.513.6141-0.4
沖縄県65,4009.4442446.4

除く率=賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家/総住宅。率の順位は小数第1位の同率を同順位とする競争順位。順位が小さいほど値が大きいだけで、地域の良否を表しません。

方法|実行した方法と、使わなかった方法

openpyxl
公式Excelの指定シート・セルを再読込し、抽出仕様と照合。
pandas
学校種・学年、地域ごとの整形と集計。欠測と調査対象外を区別。
Polars / DuckDB
別の集計エンジンで行数・数値チェックサムを照合。チェックサムは全国値ではない。
NumPy
分位点と原表の100戸単位丸めによる算術境界を計算。標本誤差とは区別。
SciPy
Spearman・Pearson相関、東京都除外、1県ずつ除外、1桁丸めを再計算。有意差検定としては用いない。
Matplotlib / Seaborn
共通の分母を示す比較図と47県の散布図を出力。

この分析の限界

  • 空き家数は標本調査による推定値です。100戸単位の丸めで全国・都道府県・内訳の合計は一致しない場合があります。
  • 「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は、放置住宅や危険住宅、法的な特定空家等と同義ではありません。
  • 2023年の住宅ストックと2026年の地価変動率の比較です。現在の募集在庫や成約価格の比較ではありません。
  • 都道府県の相関で、地域の交絡要因や空間的な依存を調整していません。市町村・個別物件への外挿はできません。
  • 1県ずつ除外した範囲は信頼区間ではありません。小数の丸めによる算術境界も、調査の標本誤差とは異なります。
  • 構成比は各地域の空き家総数が分母。全国の構成比は全国原表から計算し、県の単純平均を使いません。100戸単位の公表値で、末尾の桁や丸め残差は標本誤差を表しません。

公式出典と再現資料

原表を保存し、URL・訂正日・SHA-256、変換手順、使用機能、限界を記録しています。表示値の丸めと、原表の丸めによる差を区別しています。

結論

空き家900万戸という全国総数や空き家率だけでは、地域で扱うべき状態を選べません。戸数で規模を、総住宅に対する率で地域内の強さを、用途別構成で状態候補を分けて見る必要があります。地価との地域相関は追加調査の材料で、個別物件の価格・危険性・活用可否を示すものではありません。