同時に走らせていい仕事と、1本ずつしかできない仕事
ある日の夜、書く仕事を6本まとめて同時に投げました。
投げたあと、私は自分の画面の作業に戻りました。
ブラウザを開いて、1件ずつ手で進める種類の仕事です。
6本が書き上がってくる間、私はずっと別のことをしていました。
これを1本ずつ順番にやっていたら、終わるのは朝になっていたと思います。
ただ、同じやり方で全部が並行できるわけではありませんでした。
同時に走らせた瞬間に取り合いが起きて、静かに壊れる仕事があります。
この記事は、その線引きの話です。
並行できたのは「別のファイルの中だけで終わる仕事」だった
6本の中身は、どれも文章を書く仕事でした。
共通していたのは、この3つです。
・それぞれ別のテーマで、互いの内容を参照しない
・それぞれ別のファイルに書き出す
・途中で人の操作を挟まない
この3つが揃っていたから、同時に走らせても互いに触りませんでした。
書く仕事は、外の世界に触りません。
指示文を読んで、文字を作り、決められた場所に置きます。
置く場所が別なら、隣で何が動いていても関係がない。
ここが並行できる仕事の条件でした。
逆に言うと、書き出し先が同じファイルなら、それはもう並行できません。
2本が同じ紙に同時に書き込んでいるのと同じで、あとから書いたほうで前が消えます。
同時に投げるときは、書き出し先を1本ずつ別にする。ここは崩さないようにしています。
壊れたのは「機械を取り合う仕事」だった
一方で、画面を触る仕事は同時に動かせませんでした。
理由は単純で、機械に1つしかないものがあるからです。
同時に1つしか使えないもの
① 手(マウスとキーボード)── 機械に1組しかない
② 画面のいちばん前 ── 前に出ている1枚しか中身が見えない
③ ログインしているアカウント ── 切り替えると、動いている作業の足元が全部入れ替わる
④ コピーの置き場 ── 最後にコピーしたもの1つしか残らない
この4つのどれかを使う仕事は、何本まとめて頼んでも結局は順番待ちになり、無理に並べると壊れます。
②は、私が長く見落としていたところです。
画面の裏に回したページは、そもそも描かれていません。
中身を読み取ろうとしても空っぽに見えるので、「まだ処理が終わっていない」「その画面は存在しない」と誤診しました。
実際には、前に出せばちゃんと出てきます。この誤診だけで1時間以上を溶かしました。
つまり、画面を触る仕事には「前に出ていること」という条件がついています。
前に出せるのは1つだけです。だから画面の仕事は、構造的に1本ずつにしかなりません。
③も同じ性質です。
ログインするアカウントを切り替えると、その機械で動いている作業の全部が、いっせいに別人になります。
片方の都合でアカウントを変えると、もう片方は知らないうちに違う立場で作業を続けてしまいます。
コピーの置き場で、中身が消えた
いちばん静かに壊れたのが④でした。
ある日、私が用意した文章を貼り付ける直前に、別のところで違うものがコピーされていました。
置き場には最後の1つしか残りません。
貼った先に出てきたのは、私が用意した文章ではありませんでした。
厄介なのは、これがエラーにならないことです。
貼り付け自体は成功しています。中身が違います。
コピーの置き場は、機械の中で一番見えにくい共有資源でした。
どの作業からも同じ1か所を使うのに、誰が最後に書いたかは表に出てきません。
対策は1つだけにしました。
貼る直前に、置き場の中身を読んでから貼る。
コピーしてから貼るまでに時間が空いたときは、もう一度読み直します。
数秒で終わる確認ですが、これを入れる前は、違うものを本番に貼っていました。
あとから見つけた、5つ目の共有資源
4つを整理したあとで、もう1つ見つけました。
番号を振るタスクの記録です。
私は未完の仕事を1つのタスクの記録で管理していて、1件ずつ通し番号を振っています。
その番号が、一度重複しました。
理由は、いま思えば当たり前でした。
複数の作業が同時に「次の番号は何番か」を見に行くと、どれも同じ番号を見ます。
そして、どれもがその番号を使います。
以来、番号を振るときは、その場でタスクの記録の中の最大値を数え直してから振るようにしました。
覚えている番号や、少し前に見た番号は使いません。
これはファイルの中の話なので、一見すると並行できる側に見えます。
でも、書き出し先が同じ1つのタスクの記録になっている時点で、機械を取り合うのと同じことが起きます。
見分け方はこうなります。
その仕事が「みんなで見に行く1つの表」を更新するなら、それも1本ずつです。
在庫表、請求番号、予約枠、共有カレンダー。
身のまわりだと、このあたりが同じ形をしていました。
線引きは「ファイルとテキストか、機械か」
私が今使っている見分け方は、これだけです。
同時に走らせる ── ファイルとテキストだけで終わる仕事(読む・書く・整える・下書きを作る)
1本ずつにする ── 画面・機械・アカウントを触る仕事(クリック・入力・ログイン・アップロード・送信)
前者は何本並べても互いに触りませんが、後者はどれか1つしかない資源を取り合います。
迷ったときは、その仕事に「手が要るか」で考えています。
手が要らない仕事は、いくつあっても同時に置けます。
手が要る仕事は、手が1組しかないので列になります。
これは人を雇うときと同じ話でした。
書く人は何人いても、机さえあれば並べられます。
でもレジが1台しかない店では、何人いてもレジ打ちは1人ずつです。
機械の中でも、レジにあたるものが4つある。そう考えると迷わなくなりました。
並行の本当のコストは、後ろにある
もう1つ、正直に書いておきます。
6本を同時に投げると、6本が同時に返ってきます。
返ってきたものは、そのままでは出せません。
私の場合、直す工程がいちばん時間を食いました。
一度の検査で見つかったものを直すと、その修正から新しいずれが生まれます。
だから修正したら必ずもう一度品質チェックします。検査は2周かけないと終わりませんでした。
時間を見積もるときは、作る時間と同じだけ、直して検査する時間を取るようにしています。
並べるほど速くなるのは「作る」までです。
そのあとの品質チェックと、外に出す最後の一歩は、今も私が1つずつ手でやっています。
ここは減っていません。
そして、量産して置きっぱなしにするのがいちばん悪い形でした。
終わっていないものが6本並ぶだけで、机は前より散らかります。
数を増やすなら、増えた分を受け止める品質チェックの時間を先に確保する。
これをやらないと、並行は速さではなく在庫になります。
もう1つ、並行のあとに足した確認があります。
同時に作らせると、似た名前のファイルが一度にたくさん出てきます。
私は以前、その中から1つを取り違えて、そのまま外向けの画面に出したことがありました。
文字の種類が1字だけ違う、見た目ではほぼ判別できない名前でした。
出したあとで壊れているのが分かって、取り下げてもらう羽目になりました。
それから、掴む前にファイル名と大きさを機械で照合しています。
目で見比べる工程は、本数が増えるほど当てになりません。
6本並んだ時点で、私の目はもう区別できていませんでした。
実際にどう頼んでいるか
同時に投げるときは、頼み方をこう固定しています。
① 1本ずつ、書き出し先のファイルを別にして指定する
② その仕事の中では画面を触らせない。下書きを書き出すところで止める
③ 画面を触る工程は全部あとに回し、自分の手で1本ずつ進める
効いたのは③を切り離したことです。
以前は「調べて、書いて、投稿まで」と一息で頼んでいました。
すると、どの依頼も最後は画面へ出てきて、そこで他とぶつかります。
5本頼めば、5本が同じ画面の前で渋滞します。
今は「書くところまで」で切っています。
切ったぶん、最後は自分の手が要ります。
そのかわり、同時に並べられる本数が増えました。
順番も決めています。
先に、手の要らない仕事を全部投げる。
そのあとで、自分は手の要る仕事に取りかかる。
逆にすると、待ち時間が二重になります。
自分が画面に張りついている間、書く仕事は1本も進んでいないからです。
途中で新しい依頼を思いついたときは、走っているものを止めません。
止めて考え直すと、そこまで動いていた分がまるごと待ちに変わります。
手が要らない仕事なら、そのまま列に足します。
手が要る仕事なら、画面の順番待ちの最後尾に置きます。
思いつきは割り込みではなく、燃料として扱う。
そう決めてから、新しく浮かんだことで作業を続けられるようになりました。
この線引きを、自分の仕事に当てはめる
AIの話に見えますが、外注や家族への頼み方でも同じでした。
同時に頼めるのは、それぞれが自分の紙の上で終わる仕事です。
1つしかない道具、1つしかない口座、1つしかない鍵を使う仕事は、何人に頼んでも順番待ちになります。
だから、人数や台数を増やしても速くならない工程があります。
そこは増やすところではなく、列を短くするところです。
自分の仕事を並べ直すときは、まずこの2つに分けてみてください。
・書いて渡すだけで終わるか
・どこかにログインして、何かを押す必要があるか
前者だけを同時に並べる。後者は素直に列にする。
私はこの分け方をしただけで、待っている時間がはっきり減りました。
速くなったのは処理の速度ではなく、待ち方のほうでした。
今日、ひとつだけやるなら
今週AIに頼もうとしている仕事を紙に書き出して、「ログインして何かを押す工程が入っているか」だけで2つに分けてください。押す工程が入っているものは、そこで線を引いて「その手前まで」に頼み直します。
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この記事を書いた人
AI秘書と仕事を運用しています。
AI秘書のアリアと、製造役のもう1台のAIに、仕事の大半を渡しています。
私がやるのは、最後に決めることと、外に出す言葉を選ぶことです。
目指しているのは、稼ぐことそのものより、日々の面倒な確認や手戻りを減らして、家族と過ごす時間や休む時間を増やすことです。