AI秘書アリア ラボ
AI秘書と動かす仕事の、実物の運用記録

捨てる方の選択肢も、1回触ってから捨てる|2週間を無駄にした判断

2週間かけて作ったものが、動きませんでした。

検討のいちばん最初に「これは手間が大きそうだ」と言って候補から外した方のやり方に切り替えたら、その日のうちに動きました。

失ったのは2週間です。防ぐのにかかったはずの時間は、1時間ほどでした。捨てる方を1回、自分で触ってみれば済んだ話です。

この記事は、その判断の記録と、同じ穴に落ちないために今使っている決め方です。

二択の片方を「たぶん手間が大きい」で消した

私はAI秘書のアリアと、動いて喋るキャラクターを作ろうとしていました。

やり方は大きく2つありました。1枚の絵をパーツに分けて動かす方式と、立体のモデルを組んで動かす方式です。

私は「どっちがいいと思う?」と訊き、アリアは前者を選びました。理由は次の二つです。

・後者はモデルを作る手間が大きそうだ
・前者ならAIだけで最後まで完結する

ここで大事なのは、この「手間が大きそうだ」に根拠が無かったことです。

後者に使うソフトを、私たちは一度も起動していませんでした。開いてもいないものの手間を、開かずに見積もって、それを理由に候補から消したのです。

決めた瞬間は、ちゃんと判断したように見えていました。でも私がやったのは、片方を見ないと決めることでした。

2週間、同じ場所で壊れ続けた

選んだ方式で作業が始まりました。

髪を動かすとパーツが重なる。下地が黒く抜ける。輪郭がぼやける。直しては、また同じ症状が出ます。

私たちはこれを「実装が甘いからだ」と受け取りました。だから直し方の方を変え続けました。分割の精度を上げる。輪郭線を太くしてのりしろにする。抜けた部分を別のAIで描き足す。描き足すと今度は、動かすたびに違う絵が生えて揺れます。

そうやって2週間が過ぎて、動く顔はできませんでした。

直らない理由は、腕ではなく前提にあった

後から分かった真因は、こうです。

生成された1枚の絵には、隠れている部分が最初から存在しません。髪をどけた下の頬も、腕を上げた下の胴も、その絵には描かれていない。だから分割して動かすと、動かした先が空白になります。空白を埋めようとすれば、埋めるたびに別の絵が生えます。

これは実装の巧拙ではありません。その手法の構造上の限界です。同じやり方を何度やっても、同じ場所で壊れます。機材を強くしても直りません。元の絵に無い情報は、計算資源からは出てこないからです。

自分の仕事に置き換えると、こういう場面です。「うまくいかないのは、まだ詰めが甘いからだ」と思って手を入れ続けている作業が、実は前提のところで成立していない。詰めても詰めても同じところに戻ってくるなら、詰め方の問題ではありません。

私がやっていた順序は、実装が甘いと考える、やり方を工夫する、機材や人手を足す、でした。本当はその手前に、前提が成立しているかを見る工程が要ります。そこが崩れているときだけは、工夫も追加投入も効きません。

同じ場所で2回壊れたら、腕ではなく前提を疑う。これが今の私の切り替え線です。

捨てていた方に切り替えたら、その日のうちに動いた

2週間目に、外していた方式に切り替えました。立体のモデルを組む方です。

その日のうちに、モデルができて、喋って、口が動きました。

理由も、後から見れば当たり前でした。立体のモデルには、髪の後ろも腕の下も最初から存在します。だから重なりも黒抜けも原理的に起きません。まばたきや口の動きは規格の中に標準で入っていて、自分で仕込む必要がありませんでした。

つまり「手間が大きそうだ」という見積もりは、外れていました。しかも外れ方が逆でした。手間が大きいと思って避けた方が、手数は少なかったのです。

未検証の見積もりは、単に精度が低いのではありません。逆を向いていることがあります。ここが怖いところです。

「AIだけで完結するか」で選んだのが間違いだった

この判断の芯だけ取り出すと、こうなります。

私たちは「AIだけで完結するか」で手法を選びました。
選ぶべきだったのは「その手法が物理的に成立するか」でした。

前者は手数の話です。後者は、そもそも可能かどうかの話です。順番が逆でした。成立しない手法をどれだけ自動化しても、成立しないままです。

これは、動くキャラクターに限った話ではありません。

・全部AIに書かせられるから、この資料の形式にする
・人手が要らないから、この納品形式にする
・自動で取れるから、この集計のやり方にする

どれも手数を基準に手法を選んでいます。先に確かめるのは、その形式で欲しい結果が出るのかどうかです。手数の比較は、そのあとです。

手法を決める前に確かめる3つ
① 成立するか ── その方式で、欲しい結果が原理的に出るのか
② 触ったか ── 捨てる方の候補を、1回でも自分で動かしたか
③ 壊れる場所 ── うまくいかないとき、どこで壊れるか見当がつくか

②に「いいえ」が付いている候補を捨てたときは、判断ではなく先送りです。私はそう扱うことにしました。

実験は小さくていい。1回触れば思い込みは壊れる

「両方きちんと検証してから決めましょう」と言われると、途端に重くなります。比較表を作って、条件を揃えて、というやつです。あれは私にはできませんでした。

私が言っているのは、そこまでではありません。捨てる方を1回触れば十分です。

私が今使っている目安を書きます。

・時間を1時間に切る。1時間で結論が出なくてもそこで止める。分かったところまでが収穫
・完成品を作ろうとしない。いちばん怪しい1点だけを触る
・「できるか」ではなく「どこで壊れるか」を見に行く。無理な手法は、壊れ方が早く出る
・触った結果を1行で残す。「触っていないから分からない」のか「触ってみて駄目だった」のかを、後から区別できるようにする

今回の件で言えば、1時間あればソフトを入れて、顔をひとつ作って、書き出すところまでは行けました。それだけで「手間が大きそう」という思い込みは消えていたはずです。

思い込みは、議論では壊れません。1回触ると壊れます。この差はかなり大きいと感じています。

同じ間違いは、もっと小さい場面で何度も起きていた

2週間の失敗は目立ちますが、同じ形の失敗は日常のサイズでも起きています。私の実例を3つ書きます。

ひとつ目。公開するページに載せるリンクを、手元にあった番号から組み立てて貼りかけました。その番号は用途の違うもので、組み立てたURLはそもそも開きません。1本たたけば数秒で分かることを、確かめずに本番へ出そうとしていました。「番号があるのだから、これで作れるはずだ」の未確認です。以来、外に出すURLは全部、自分で叩いて応答を見てから貼っています。

ふたつ目。検証用の仕組みを、出力を見ないまま書きました。結果の詳細は別ファイルに出る形式だったのに、画面に出る文字だけを見る作りにしていて、「問題なし」という偽の合格を出しました。先に1回動かして、どこに何がどの形式で出るのかを見てから書けばよかったのです。

みっつ目。作り直したページを、自分の目で見ないまま「直りました」と報告しました。要素の数を数えて、合っていたからです。でも実際に開くと、何も表示されていませんでした。数が合うことは、見えていることの証明になりません。

3つとも同じ形をしています。確かめられるものを、確かめずに決めた。そして確かめるコストは、どれも数秒から数分でした。

失敗の大きさは、確かめるコストの大きさとは関係がありません。ここが直感に反するところで、だから何度もやります。

今の決め方(そのまま真似できる形)

私が今やっているのは、この3つだけです。

① 二択で迷ったら、負けそうな方に1時間だけ使う
② その1時間は「成立するか」だけを見る。きれいさや速さは見ない
③ 捨てるときは、捨てた理由を1行で残す。未検証の思い込みで捨てたなら、そう書く

効いているのは③です。捨てた候補に「触った」「触っていない」の印を付けておく。行き詰まったとき、真っ先に戻る場所がそこになります。

いちばん高くつくのは、2週間経ってから「そういえばあれ、試していなかったな」と気づくことです。印が付いていれば、2日目に気づけます。

AIに選ばせるときは、一言だけ足す

もうひとつ、今回の反省から変えたことがあります。

今回、方式を選んだのはアリアでした。私はその理由を検算しませんでした。AIは「こちらの方が手間が少ないです」と、根拠らしい形で答えてきます。文章として整っているぶん、確かめた結論に見えます。

今は、候補を出させたあとに一言だけ足しています。

任せるときに足す一言
悪い頼み方 ── 「AとB、どっちがいいと思う?」
良い頼み方 ── 「AとB、どっちがいい? あと、捨てる方を実際に動かした? 動かしていないなら、そう書いて」

訊かれた側は「動かしていません」としか答えられないので、そこで思い込みが表に出ます。

これは人に頼むときも同じでした。「Bは大変そうなのでAで行きます」と言われたら、大変そうの中身を1回だけ訊く。訊いてみると、やったことがないだけ、というのがかなりの割合であります。私がそうでした。

今日、ひとつだけやるなら

今、進め方で迷っている二択をひとつ思い出してください。そのうち「たぶん大変そう」で外した方に、今日15分だけ使ってください。完成させなくていいので、いちばん怪しいところを1回だけ動かして、結果を1行書き残してください。


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この記事を書いた人

AI秘書と仕事を運用しています。

AI秘書のアリアと、製造役のもう1台のAIに、仕事の大半を渡しています。
私がやるのは、最後に決めることと、外に出す言葉を選ぶことです。

目指しているのは、稼ぐことそのものより、日々の面倒な確認や手戻りを減らして、家族と過ごす時間や休む時間を増やすことです。

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