記録は1つに絞る|同じ設定が2か所にあると、古いほうが使われた
ある設定について、私は「いいえ」と決めました。
出来上がってきたものを見たら「はい」で作られていました。
誰かが勝手に変えたのではありません。私が決めた「いいえ」は、ちゃんと残っていました。ただ、それとは別のメモに、決める前に書いた古い「はい」も残っていたのです。
重い作業を担当してもらっている製造役のAIは、その古いメモのほうを読みました。そして、書いてあるとおりに作りました。
そのAIの仕事は正しいです。渡された材料に「はい」と書いてあったのだから「はい」で作る。むしろ忠実です。
間違っていたのは、同じ設定が2か所にあって、中身が食い違っていたこと。そして、どちらが新しいのかを、材料の側が示していなかったことです。
人は聞き返すが、材料どおりに動く相手は聞き返さない
これを人に頼んでいたら、たぶん途中で連絡が来ます。「二通り書いてあるんですけど、どっちですか」と。
材料どおりに動く相手は、そこで止まりません。先に目に入ったほうを採用して、最後まで進みます。
しかも、どちらを見て決めたのかは、出来上がりを見ても分かりません。完成品には「はい」で作った結果しか載りません。「はい」と書いてある古いメモを読みました、とは書いてありません。
私は出来上がりを見て、しばらく意味が分かりませんでした。自分の決定と記憶を疑い、両方のメモを開いて、やっと原因が分かったのです。
このときに使った時間が、いちばんもったいない時間でした。作り直す時間ではありません。なぜこうなったのかを探す時間です。
食い違いは、作業の失敗としてではなく、材料の失敗として起きます。渡す側の落ち度なので、渡す側でしか防げません。
決め直した日に、関係する全部を同時に書き換える
この一件のあと、決め方そのものを変えました。決定を変えたら、その日のうちに、その設定に触れている場所を全部そろえます。
決め直した日にやる3つ
① 決定そのものを書いた場所を新しくする
② 同じ設定に触れている他のメモとひな形を、その日のうちに同じ内容へそろえる
③ 古い記述は消す。「※以前は◯◯でした」の形で残さない
いちばん手間なのは②で、いちばん効くのも②です。①だけやると、直したつもりの記憶だけが残ります。
③は、はじめは抵抗がありました。経緯を残しておきたくなるからです。消すのが惜しいものは、別の保管用の置き場へ移します。本文からは消して、置き場に移す。この2つを1回でやるのが大事で、「あとで移す」にすると本文に残ります。
1か所だけ直した状態は、直っていない状態より危ない。直した記憶があるぶん、次に食い違いを見ても「もう直したはず」と思ってしまうからです。
未完を追う場所は、1つだけにする
食い違いは、設定だけでは起きません。「やりかけの仕事の一覧」でも同じことが起きます。
私は以前、未完の仕事を複数の場所で追っていました。全体の一覧が1つ。案件ごとのメモの中にも、その案件だけの残タスクが書いてある。頭の中にも、当然あります。
これで何が起きたかというと、片方だけ閉じるようになりました。案件メモのほうに「済」と書いて、全体の一覧は開いていない。数日後に一覧を見ると、終わったはずの仕事が未完のまま並んでいます。
そうなると、一覧そのものを信じなくなります。信じない一覧は、開かなくなります。開かない一覧は、無いのと同じです。
だから今は、追跡する場所を1つに絞っています。未完のものは、そこにしか書きません。案件メモに残タスクを書きたくなったら、そこには書かず、追跡用の1つに1行足します。
タスクの記録の1行に入れるものを固定する
場所を1つに絞ると、今度は中身が太ります。経緯や言い分を書き込みたくなるからです。
太ったタスクの記録も、開かなくなります。1件を読むのに時間がかかるので、忙しい日ほど飛ばします。
なので、1行に入れるものを固定しました。
・何を始めたか
・いま何段階目か
・次にやること(下書きまで出来ているかどうか)
・期限
・自分が手を動かす必要がある点
・どこから来た話か
この6項目です。特に3つめの「次の作業」は、動詞で書くようにしています。「検討中」ではなく「見積の文面を作って、送信前で止める」と書く。動詞で書けないものは、そもそも次の作業が決まっていないという合図になります。
タスクの記録に書くこと ── 状態と、次の一手だけ
別のファイルへ逃がすこと ── 経緯・やり方の手順・学んだこと・過去のやりとり
上は毎日読み、下は必要になった日に読みます。読む頻度が違うものを同じ場所に置くと、頻度の低いほうが、頻度の高いほうを埋めてしまいます。
逃がすと言っても、捨てるわけではありません。手順は手順書に、教訓は教訓のファイルに。タスクの記録の行からは、その場所の名前だけ書いておきます。
番号は、目で振らない
タスクの記録の行に通し番号をつけていて、これで一度やらかしました。
既にある番号を目で見て、次の番号を振った。ところが同じ番号が既にありました。見落としです。一覧の途中で番号が飛んでいたり、閉じた行が下のほうに移動していたりすると、目では正しく追えません。
同じ番号の行が2つある状態は、話がややこしくなります。「あの件」と番号で呼んだときに、どちらを指しているか分からなくなるからです。
直し方は単純でした。振る前に、機械に最大値を探させます。
指示文としては、こう渡しています。
「新しい行を足す前に、既存の番号の最大値を検索して報告してください。そのあとで、最大値の次の番号を使ってください。目で見て決めないでください。」
わざわざ「目で見て決めないでください」と書いているのは、この一文が無いと、それらしい番号を推測で置くことがあるからです。推測でも大抵は当たります。当たらない日だけ、重複が生まれます。
番号に限らず、既にあるものの続きを作る作業は、機械に数えさせたほうが速くて確実です。ここは私が手を出さない工程にしました。
外に出した文は、数が増えた日に嘘になる
もう1つ、同じ根っこの失敗があります。今度は外から読める場所で起きました。
自分の商品を案内するページに「今、出しているのは2本だけです」と書いていました。書いた日には、正しい文でした。
そのあと、商品は増えました。ページの文章は増えた日に変わりません。誰も直さないからです。気づいたときには、8本ある状態で「2本だけです」と書いてあるページが、外から読める場所に残っていました。
そこは、案内経路から人が流れてくるページです。いちばん最初に読まれる場所に、こちらの現状と食い違う一文が置いてあったことになります。
厄介だったのは、同じ文がもう1か所にあったことでした。そのページは元になるファイルから作り直せる形にしていたので、公開されている側だけを直しても、次に作り直した時点で古い文が戻ってきます。両方を同じ日に直して、そのうえで公開された状態を実際に開いて、直った文字が出ていることを確かめました。
この型は、増えた日には見つかりません。増やす作業のほうに気を取られているからです。
なので、数が変わったら決まった言葉で全部を検索する、という形にしました。「◯本だけ」「まだ出していません」「順次公開」。数が変われば嘘になる言い回しを、先に検索語として決めてあります。思い出す必要がなくなるので、疲れている日でも回ります。
二重化は、忙しい日に生まれる
ここまでの失敗は、どれも同じ日に起きています。急いでいる日です。
急いでいると、正しい場所を開くのが面倒になります。目の前のメモに書く。あとで移すつもりで、移さない。そうやって二つめの置き場が生まれます。
生まれた瞬間は、何も起きません。中身が同じだからです。問題が出るのは、片方だけを更新した日です。そこから先は、どちらを読むかで結果が変わります。
だから私は、判断のたびに「これはどこに書くのが正しいか」を考えるのをやめました。考えると、忙しい日に負けます。代わりに置き場を先に決めておいて、迷う余地を無くしました。
・未完の仕事 ── 追跡用の1つのタスクの記録だけ
・やり方 ── 手順書
・決めたこと・変えたこと ── 決定を書くファイル
・変わる数字 ── 一覧の置き場
新しく何かを書くときは、この4つのどれかに入れます。どれにも入らないものは、たいてい書かなくていいものでした。
そして、同じ内容を2か所に書きたくなったら、そこで止まります。書きたくなった時点で、片方はいずれ古くなるからです。片方を選んで、もう片方からは名前で参照する。
同じことを2か所に書かない。私の運用ルールの中で、いちばん短くて、いちばん効いている一行です。
直したあと、もう一度だけ数える
最後に、直したときの手順も書いておきます。
食い違いを見つけて直したら、その場で、同じ言葉をもう一度検索します。1か所直した拍子に、別の場所が残っていることがあるからです。
① 食い違っている言葉を決める(例:その設定の名前)
② 全部のファイルを検索して、当たった場所を一覧にする
③ 新しいほうへ全部そろえる
④ もう一度同じ検索をかけて、古いほうが1件も残っていないことを見る
④まで含めて1回の作業です。③で終わりにすると、また同じ日が来ます。
検索と書き換えはAIに任せています。どちらを新しいほうとするかの判断だけ、私が決めています。ここを渡すと、たまたま新しい日付が書いてあるだけの誤りが正になってしまうので、渡していません。
この4手にかかる時間は、食い違ったまま作られたものを作り直す時間に比べると、比べるまでもありませんでした。
今日、ひとつだけやるなら
いま自分が「やりかけの仕事」を書いている場所を、数えてみてください。メモアプリ、手帳、付箋、AIとの会話、頭の中。2つ以上あったら、そのうち1つを「ここだけ見る」と決めて、残りから未完の行だけを移してください。移し終わったら、移した側は空にします。
この記事のような「任せ方の設計」は、公式LINEでも少しずつ配っています。
うまくいった手順と、戻した手順の両方を記録します。
登録した方に、無料の実用PDFをお渡ししています。
この記事を書いた人
AI秘書と仕事を運用しています。
AI秘書のアリアと、製造役のもう1台のAIに、仕事の大半を渡しています。
私がやるのは、最後に決めることと、外に出す言葉を選ぶことです。
目指しているのは、稼ぐことそのものより、日々の面倒な確認や手戻りを減らして、家族と過ごす時間や休む時間を増やすことです。