「無い」と決める前に、1枚撮る|画面に見えない状態と、データが無い状態は別
ある日の作業で、1時間以上を溶かしました。
やろうとしていたのは単純なことです。ブラウザ上の申請フォームで、種類を選ぶ欄をひとつ開いて、そこから項目を選ぶ。それだけでした。
AIに任せたら、こう返ってきました。
「選択肢が出てきません。項目が0件です」
私はそれを信じました。そして、間違った方向に走り出しました。
データが無いと決めた瞬間に、調査の方向が固定される
「項目が0件」と聞いて、私が疑ったのはこの3つです。
・押す場所がずれているのではないか
・画面の作りが変わったのではないか
・読み込みが終わっていないのではないか
順番に潰していきました。押す座標を計算し直し、画面を再読み込みし、待ち時間を伸ばしました。どれも効きませんでした。
いま振り返ると、この3つには共通点があります。どれも「項目は本当に0件だ」という前提の上に乗っているということです。
前提そのものを疑っていませんでした。だから、何度やり直しても同じところに戻ってきました。
外していたのは方法ではなく、出発点でした。
真因は「描かれていなかった」だった
分かったことを先に書きます。
その画面は、ブラウザの裏側のタブにありました。手前には別の画面が出ていて、作業対象のタブは背面にいたわけです。
背面にあるタブは、描画が止まります。止まっているあいだ、表示をきっかけにして作られる部品は、いつまで待っても作られません。
つまり、こういうことです。
データが無い ── 押しても開かない。何度やっても結果は変わらない
描かれていない ── 開く指示は通っている。表示が動いていないので、中身がまだ作られていない
この2つは、画面を読みに行った結果としてはまったく同じ「0件」に見えます。見分けがつかないまま、私は前者だと決めつけました。
同じ日に、もう1つ同型の失敗をしています。画像を作らせる作業で、画面には「生成が完了した」という表示が出ているのに、画像そのものが取れませんでした。「まだ作っている途中だ」と誤診して、6分待って諦めました。あれも同じ原因です。作り終わっていて、描かれていなかった。
対処は1工程だけ
やることは、たった1つです。
画面を1枚撮る。
撮る動作そのものが、止まっていた描画を1回だけ動かします。動いた瞬間に、待っていた部品が作られます。撮ったあとに読みに行けば、ちゃんと取れます。
いま私が使っている順番はこうです。
① 押す(開く/送る)
② 画面を1枚撮る ← ここが工程。記録用ではない
③ 中身を読む
②を「あとで確認するための記録」だと思っていたのが、そもそもの誤解でした。あれは記録ではなく、次の工程を成立させるための手順です。飾りで撮っているのではありません。
「無い」と報告されたときに、私が返す一言
今は、AIから「見つかりません」「0件です」と返ってきたとき、対処法を考える前に必ずこれを訊きます。
「その画面は、いま手前に出ていますか」
手前に出ていないなら、無いという報告はまだ結論になりません。1枚撮ってから、もう一度読んでもらいます。
これで解決しなければ、そこで初めて「本当に無い」の線を調べます。順番が逆でした。
この形は、画面の話だけではなかった
同じ月に、私は別の場面で3回続けて同じ間違い方をしています。どれも画面の話ではありません。
・「あの作業はまだ下書きのままだ」と思っていた → 実際は全部公開済みだった
・「あの設定はまだ入れていない」と思っていた → とっくに入っていた
・「あのサービスは登録から必要だ」と思っていた → 登録も設定も終わっていた
3件とも、自分の記録を見て判断していました。そして3件とも外しました。
理由は同じです。記録には日付があります。1週間前の記録は、いまの状態ではありません。
見えていないものを「無い」と扱うのと、更新していない記録を「いま」として扱うのは、同じ形の間違いです。手元にある情報が古いのに、それを現在だと思い込んでいる。
待つ判断と、確かめる判断は違う
この件のあと、自分の作業の中で「待っている時間」を見直しました。
AIに何かを頼んで、結果が返ってこないとき、私がやっていたのは基本的に「もう少し待つ」でした。待って駄目なら、もう一度頼む。それを繰り返していました。
問題は、待っても状況が変わらない種類の詰まりがあることです。上に書いた画面の件がまさにそうでした。1時間待っても、10時間待っても、描かれないものは描かれません。
いまは、待つ前にこれを決めます。
待っていい ── 時間が経てば進むもの。処理そのものに時間がかかっている場合
待っても無駄 ── 何かの条件が満たされていないもの。放っておいても条件は満たされない
見分け方は単純で、「いま何が進んでいるのか」を一言で言えるかです。
「いま何が進んでいますか」と訊いて、「読み込み中です」としか返ってこないなら、それは進捗の説明になっていません。何をどこまで読み込んで、あと何が残っているのか。答えられないなら、進んでいない可能性を疑います。
私が決めている上限は30分です。30分たっても「進んでいます」以上のことが分からなければ、待つのをやめて、生きているかどうかを確かめる作業に切り替えます。切り替えるだけで、その日の残り時間の使い方が変わります。
誤診は、対処が正しいほど深くなる
この件で怖かったのは、間違った方向の対処が、どれも技術的には正しかったことです。
押す場所がずれているかもしれない、というのは正しい疑いです。画面の作りが変わったかもしれない、というのも正しい疑いです。実際、それが原因のことはよくあります。
正しい疑いを、正しい手順で、丁寧に潰していきました。だから時間がかかりました。雑にやっていたら、もっと早く「おかしいな」と思ったかもしれません。
丁寧に潰していると、進んでいる感じがします。1つ潰すたびに、残りが減っている気がする。実際には、最初から違う棚を探していました。
なので、いまは3つ潰して駄目だったら、一度作業をやめます。潰し方を増やすのではなく、前提そのものを疑う時間を作ります。5分でいいので、「そもそもこの前提は正しいのか」だけを考えます。
3つ潰して駄目 ── 4つ目を探す(前提はそのまま)
3つ潰して駄目 ── 前提に戻る(探す場所を変える)
下の行に切り替えるのが、自力ではなかなかできませんでした。いまは回数で機械的に決めています。
私が今も守っている3行
この件から作ったルールは、3行に収まりました。
① 「無い」と言われたら、まず見えているかを確かめる
② 記録を根拠にするときは、その記録の日付を見る
③ 人に何かを頼む前に、その画面を自分で1回開く
③がいちばん効きました。人に「これをやってください」と頼む前に、自分でその画面を開いてみる。それだけで、上に書いた3件はどれも起きませんでした。
頼まれた側からすると、開いてみたら終わっていた作業を頼まれるのは、単純に時間の無駄です。しかも「この人の言うことは確かめないと危ない」という印象だけが残ります。信用は、こういう小さいところで減っていきます。
今日、ひとつだけやるなら
AIから「見つかりませんでした」という報告が来たら、対処を考える前にその画面を自分で開いてみてください。
15分もかかりません。私の場合、開いた時点で答えが出ていたことが、その日だけで3回ありました。
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この記事を書いた人
AI秘書と仕事を運用しています。
AI秘書のアリアと、製造役のもう1台のAIに、仕事の大半を渡しています。
私がやるのは、最後に決めることと、外に出す言葉を選ぶことです。
目指しているのは、稼ぐことそのものより、日々の面倒な確認や手戻りを減らして、家族と過ごす時間や休む時間を増やすことです。