手で直したその1行は、次の生成で消える|確定版をどこに置くか決める
決まった時刻に走る自動処理を、いくつか持っています。朝の準備、昼の仕分け、夜の締め、週のはじめの見直し。それぞれに手順書があって、AIがそれを読んで動きます。
ある日、そのうちの何本かが登録から外れていました。フォルダは残っているのに、時間になっても走らない。
私は登録し直すことにしました。登録用の操作をして、走るようにする。数分で終わる作業のはずでした。
終わったあとで気づくと、手順書の中身が全部消えていました。
何が起きたか
登録用の操作は、手順書のファイルを新しく書き出すものです。私が「登録し直す」と思っていた操作は、実際には「作り直す」操作でした。
その結果、いちばん長い手順書は、14,556バイトから553バイトになりました。
中身は、こうなっていました。
「手順書を読んで実行してください」
読むべき手順書そのものが、この一行に置き換わっています。自分自身を読めと書いてある、何も実行できないファイルです。
同じことが7件で起きました。
登録し直すつもりだった
あとから考えると、私は言葉に引っぱられていました。
私の頭の中 ── 「登録が外れているから、登録し直す」
実際の操作 ── 「この内容で、新しく作る」
「し直す」という言葉には、元のものが残る感じがあります。でも、道具のほうにそんな区別はありませんでした。渡した内容で新しく書きます。
手元にあるものを直す操作と、渡した内容で作り直す操作は、見た目が似ています。どちらも「実行したら、そのファイルが正しくなる」ように見えます。違うのは、書かなかった部分がどうなるかです。
直す操作なら、書かなかった部分は残ります。作り直す操作なら、書かなかった部分は消えます。私は前者だと思って、後者を実行しました。
助かった理由は、置き場所を分けてあったから
7件とも復旧できました。理由は1つです。
手順書の原本を、別の場所に置いてあったからです。
自動処理が読むファイルは、原本から作られる生成物でした。生成物が壊れても、原本から作り直せば元に戻ります。実際、命令を1つ実行しただけで、7件とも元のサイズに戻りました。
これを決めたのは、以前の自分です。そのときは面倒に感じたはずです。同じ内容のファイルが2か所にある状態を、わざわざ作るわけですから。
でもこの日、それに救われました。
原本 ── 人が書く。手で直していい場所。ここだけが正しい
生成物 ── 道具が作る。手で直さない。いつ消えてもいい
手で直していい場所を1か所だけに決める。これが、この件から残った1行です。
なぜ生成物を手で直したくなるのか
理屈は分かっていても、実際には生成物のほうを直したくなります。私も何度もやりかけました。理由は単純です。
生成物のほうが、目の前にあるからです。
不具合が出るのは生成物のほうです。開いて中を見るのも生成物です。「ここの一行が違うな」と気づいた瞬間、その画面はもう開いています。原本を探しに行くより、その場で直すほうが速い。
そして実際、その場で直せば、その瞬間は直ります。次に生成が走るまでは。
私が使っている歯止めは、生成物の側に一行書いておくことです。
「このファイルは自動で作られます。直すのは原本のほうです。原本の場所はここです」
これを一番上に置いておくと、開いた瞬間に目に入ります。探しに行く手間も、その場に書いてあるので消えます。
上書きの前に、サイズを控える
もう1つ、この件から始めたことがあります。
上書きの可能性がある操作の前に、対象ファイルの大きさを控えておく。
今回、私が異変に気づいたのは、作業が全部終わったあとでした。もし操作の前に「14,556バイト」とだけ控えていたら、直後に見比べて1秒で分かりました。
大きさを見るだけで十分です。中身を読む必要はありません。桁が変わっていたら、何かが起きています。
いま私が入れている手順は、次の二つです。
① 触るファイルの大きさを控える
② 操作する
③ もう一度、大きさを見る
④ 桁が変わっていたら、そこで止まって中を開く
④まで行くことは滅多にありません。でも、行ったときに助かります。
AIに渡すときの言い方
この種の操作をAIに任せるとき、私は指示文にこう書くようになりました。
「既存のファイルを扱う操作をする前に、そのファイルの大きさを控えて私に見せてください。操作のあとにもう一度見せてください。大きさが大きく変わった場合は、そこで止めて、次に進む前に私に知らせてください。」
止まってもらうのが大事なところです。気づいてから知らせてもらうのでは遅い。気づいた時点で作業が続いていると、壊れたものの上にさらに作業が積まれます。
そうなると、どこまで戻せばいいのかが分からなくなります。1つ壊れているのと、壊れたものの上に3つ積まれているのでは、直す手間が変わります。
言葉のほうを直した
もうひとつ、地味ですが効いた対処があります。
操作の呼び方を変えました。
私は自分の作業メモに「登録し直す」と書いていました。この言葉が今回の誤解の原因です。だから、書き方を変えました。
前 ── 「登録し直す」
いま ── 「渡した内容で新しく作る(書いていない部分は消える)」
長いです。でも、この長さが歯止めになります。読んだ瞬間に、何が起きるかが分かります。
自分の作業メモに書く言葉は、自分で決められます。道具の側の呼び名をそのまま写す必要はありません。自分が誤解しない言葉に置き換えて書いておく。これは、あとから何度も効きました。
同じ理由で、危ない操作には印をつけています。メモの行頭に、消える可能性があることを一言添えます。読み飛ばしても、目には入ります。
戻せる操作と、戻せない操作を分ける
今回の件は、運よく戻せました。原本があったからです。
そのあと、自分の作業を「戻せる/戻せない」で分けてみました。分けてみると、思っていたより戻せないものが多くありました。
戻せる ── 原本から作り直せる。別の場所に控えがある
戻せない ── 上書きしたら終わり。控えが無い
戻せないものについては、操作の前に控えを取ることにしました。控えといっても、複製を1つ作って日付をつけた名前で置くだけです。作業としては数秒です。
ここで大事なのは、「戻せないもの」を全部なくそうとしないことでした。全部を原本つきにしようとすると、管理する場所が増えます。管理が増えると、どれが原本か分からなくなります。それでは本末転倒です。
私は、こう決めました。
・毎回作り直せるもの ── 何もしない。控えも作らない
・作り直すのに1時間以上かかるもの ── 原本を分ける
・その中間 ── 触る直前だけ複製を1つ作る
3つ目がいちばん多いです。作業の直前に複製を1つ作るだけなので、増え続けません。作業が終わって問題なければ、そのまま捨てます。
消えたら困るものを、先に一覧にしておく
この件のあと、自分の作業場を見て回りました。「これが消えたら、作り直すのに何時間かかるか」という目で見ます。
見つかったのは、こういうものでした。
・自動処理の手順書 ── 原本は別にあった。無事
・作った道具の設定 ── 原本が無かった。生成物だけだった
・記事の下書き ── 原本しかない。生成物は毎回作り直している。問題なし
2つ目が危ないと分かったので、その場で原本を作りました。作業としては、いまあるファイルを別の場所にひとつ複製して、そちらを原本と決めるだけです。5分で終わりました。
壊れてから探すのと、壊れる前に5分使うのとでは、ぜんぜん違います。私は今回、壊れてから探して、たまたま見つかった側でした。
今日、ひとつだけやるなら
自分の作業場から、自動で作られているファイルを1つ選んで、その原本がどこにあるか確かめてください。
原本が見つからなかったら、そのファイルを別の場所に1つ複製して、そちらを原本と決めてください。5分で終わります。
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この記事を書いた人
AI秘書と仕事を運用しています。
AI秘書のアリアと、製造役のもう1台のAIに、仕事の大半を渡しています。
私がやるのは、最後に決めることと、外に出す言葉を選ぶことです。
目指しているのは、稼ぐことそのものより、日々の面倒な確認や手戻りを減らして、家族と過ごす時間や休む時間を増やすことです。