「動いています」の証拠を、動いていないものから取っていた話
夜、自分のサイトを開いたら、画面が真っ白でした。
その前の日に、私はこのページを「直った」と結論しています。しかも結論する前に、確認はしていました。
確認したうえで、間違えていました。
この記事は、その「確認」が何を確認していなかったのか、という話です。
画面の話に見えますが、中身は任せ方の話です。AI秘書に何かを頼んで「終わりました」と返ってきたとき、何を見れば本当に終わったと言えるのか。私はここを長いこと取り違えていました。
「動いている印」だと思っていたものは、最初から書いてあった
そのページには、表示を切り替えるための小さな仕掛けが入っています。
私は画面の中にある「今この状態です」という印を見て、こう判断しました。
「この印がついている。だから中の処理は動いている」
これが外れでした。
その印は、処理が書き込んだものではありませんでした。元のファイルに、最初から手で書いてあったものです。処理が一度も動かなくても、そこにはその印が出ます。
つまり私は、動いていないものを見て「動いている」と判定していました。
ここが分岐点でした。この判定を信じたせいで、私は「処理は動いている。だから原因は別のどこかだ」という前提で調べ続けました。前提が間違っている調査は、どれだけ丁寧にやっても当たりません。丁寧にやるほど、外れた場所を深く掘るだけです。
静的な印 ── 最初からそこに書いてある。処理が一度も動かなくても出る
動いた証拠 ── その処理が走らなければ存在しない。件数・実行時刻・処理が書いた値
上が私の見ていたもの、下が見るべきだったものです。同じ画面に両方が並んでいるので、見分けようと意識しない限り取り違えます。
証拠は「走らなければ存在しない値」からしか取れない
これは画面に限った話ではありませんでした。任せた仕事の受け取りで、私は同じ間違いを何度もしています。
証拠にならないもの(最初からそこにある、または人が書ける)
・フォルダが存在すること。中身が今日更新された証拠ではありません
・ファイル名に今日の日付が入っていること。自分が作ったテンプレの日付かもしれません
・「完了しました」という報告文。それは文章であって、処理の結果ではありません
・画面に「処理中」「済」といったラベルが出ていること
証拠になるもの(処理が走らなければ生まれない)
・件数。何件を読んで、何件を書いたのか
・実行の時刻。中身が書き換わった時刻が、今日のものになっているか
・処理しか作れない中身。宛先ごとに変わる本文、計算後の合計、前回との差分
・失敗した件のリスト。1件も失敗していない報告は、たいてい何もしていません
私はいま、任せた仕事を受け取るとき、この「後者だけ」を見るようにしています。
前者を見て安心するのは、封筒の宛名を見て中身が入っていると判断するのと同じでした。
犯人候補を3つ並べた表は、全部シロだった
真っ白の原因を探していたとき、私は犯人候補を3つ挙げて表にしていました。
「たぶんこれか、これか、これだろう」という並びです。整理した気分になりました。
結果は、3つとも無関係でした。1つも当たりませんでした。
そのとき分かったのは、未検証の推測をいくら並べても、切り分けは1ミリも進まないということです。候補が3つになっても、確かめていない限り、手元の情報量はゼロのままです。むしろ表にすると「調べた気」になるぶん、たちが悪い。
私が最初にやるべきだったのは、候補を挙げることではありませんでした。
途中で何かが止まっていないか、警告や失敗の記録が出ていないかを、いちばん先に見ることです。
止まった場所は、推測しなくても記録に残っていました。私はそれを開かずに、頭の中だけで犯人を探していました。
順番を、そのあとこう固定しました。
① 失敗や警告の記録を、いちばん先に開く。止まっていれば、たいていここに書いてあります。
② 直前に成功した工程を特定する。原因は、その次の作業にあります。
③ ここで初めて理由を考える。推測を始めるのは最後です。
原因の推測から始めない、というだけの順番です。私の場合、これを守るようにしてから、同じ種類の調べ物で行き詰まる回数が減りました。
本当の原因は、消した部品を参照する指示が残っていたこと
実際の原因は、拍子抜けするほど単純でした。
ページの中の部品を1つ作り替えたとき、その古い部品を名指ししている指示が1行だけ残っていました。名指しされた部品はもう存在しません。処理はそこで止まり、それ以降に書いてあった仕事が一度も実行されませんでした。
真っ白の正体はこれです。表示を出す処理は、止まった行より後ろに書いてありました。
これは、画面を作る人だけの話ではありません。
・手順書から工程を1つ削ったのに、その工程の成果物を前提にした後続の手順が残っている
・使うのをやめた表を参照したまま、月次の集計だけが動き続けている
・担当を外した人の名前が、承認の流れの途中に残っている
形はどれも同じです。消したもの側ではなく、消したものを指している側が事故を起こす。
そして厄介なことに、症状は「何も起きない」としか出ません。エラーの文字が画面に大きく出てくれるなら、私はここまで遠回りしていません。
なので、いまは何かを消したときの手当てを決めています。
・部品・工程・ファイルを削ったら、それを名指ししている場所を全部探してから閉じる
・見つけた参照は、消すか、無くても止まらない形に書き換える
・その日のうちに、削除より後ろの工程が最後まで走るかを1回通す
「消す作業」を、消して終わりにしない。これだけで、静かに死ぬ処理がかなり減りました。
「走った証拠」でも、答えられない質問がある
ここまで書いた「走った証拠」も、万能ではありませんでした。同じ日に、それを思い知らされています。
原因を直したあと、数の検査は全部通りました。処理が走った印も、ちゃんと今日の値に書き換わっていました。
それでも画面を開いたら、大きな数字を出す欄から文字があふれて、下の本文の上に重なっていました。
走った証拠は「処理が動いたか」までしか答えてくれません。「その結果が人に読めるか」は、別の質問です。
数で答えられる質問と、目でしか答えられない質問がある。ここを一本にまとめようとして、私は長いこと失敗していました。
だから今は、質問を2本に分けています。走ったかは値で聞く。読めるかは自分の目で聞く。
最後の一手前まではAIに運んでもらって、出来上がりを開いて見るところだけ私の担当にしています。ここは今も手でやっています。
壊れたときに、最低限は出るようにした
直したのは原因だけではありません。壊れ方も直しました。
真っ白になった理由は、途中で止まったら何も出ない作りだったからです。処理が全部そろわないと表示しない。だから1行の事故で全滅しました。
そこで、時間が来たら強制的に表示に切り替える保険を入れました。仕掛けが動こうが止まろうが、読み込みから一定時間たてば、中身は出ます。見た目の演出は死ぬかもしれませんが、真っ白なページだけは出荷されません。
この考え方は、AIに任せる工程でもそのまま使っています。
・全部そろわないと出さない作りだと、途中で詰まったときに何も出てきません。無言で終わります
・出せるところまで出す作りにしておくと、できた分は残り、足りない箇所が名指しで書き出されます
後者にしておくと、詰まった日でも「どこまで進んで、何が足りないか」が手元に残ります。ゼロか100かにしないことが、そのまま復旧の速さになります。
任せるときの一文は、私の場合こう入れています。
「途中で詰まったら、そこで止めないでください。できた分をそのまま出して、詰まった箇所と理由を最後に一覧で書いてください」
これを入れる前は、詰まった作業が音もなく消えていました。翌日に「あれどうなった」と思い出すまで、止まっていたことにすら気づきません。
いま私が使っている、完了の受け取り方
長い話でしたが、実際に使っているのは4つだけです。
任せた仕事が「終わった」と言われたら、この4つを見る
① 走ったか ── 中身が書き換わった時刻が、今日のものになっているか
② どれだけ ── 件数を数える。0件と1件は特に疑う
③ 止まっていないか ── 失敗や警告の記録を先に読む。推測はそのあと
④ 見えるか ── 出来上がりを開いて、自分の目で見る
①②③はAI側に出させて、④だけ私がやる、という分け方です。
そのために、報告のもらい方も固定しました。
「終わりましたと書くだけの報告は要りません。処理した件数、書き換えた時刻、失敗した件の一覧、この3つを添えてください。件数が0なら、0だったとそのまま書いてください」
これを入れてから、「終わりました」と言われたのに終わっていなかった、が減りました。
言葉ではなく、処理が書いた値で受け取る。それだけの違いです。
あと、いちばん高くついた教訓をもう一度だけ書きます。
確かめていないことを、確かめたことにしない。
「動いているはず」「あるはず」「ないはず」で報告した日は、あとでやり直しになりました。見ていないなら「未確認」と書く。私はこれを自分のルールにしています。
今日、ひとつだけやるなら
いま定期的に動かしている作業を1つ選んで、「これが動いた証拠は何か」を1行で書いてみてください。
書けなかったら、その作業は動いているかどうか分かっていない、ということです。まず件数か、書き換わった時刻か、どちらか1つを出させるところから始めれば十分です。
この記事のような「任せ方の設計」は、公式LINEでも少しずつ配っています。
うまくいった手順と、戻した手順の両方を記録します。
登録した方に、無料の実用PDFをお渡ししています。
この記事を書いた人
AI秘書と仕事を運用しています。
AI秘書のアリアと、製造役のもう1台のAIに、仕事の大半を渡しています。
私がやるのは、最後に決めることと、外に出す言葉を選ぶことです。
目指しているのは、稼ぐことそのものより、日々の面倒な確認や手戻りを減らして、家族と過ごす時間や休む時間を増やすことです。