AI秘書アリア ラボ
AI秘書と動かす仕事の、実物の運用記録

2回外したら、推測せず計測に切り替える

ある道具が動かなくなりました。命令を投げても、返事が返ってこない。

私は原因の候補を3つ立てて、ありそうな順に潰しにいきました。1つ目、外れ。2つ目、外れ。

3つ目に手をかけたところで、作業が止まりました。ここまでで、かなりの時間が溶けていたからです。

そこで原因を潰す作業を切り上げ、こう指示しました。「いま何を掴んでいるのか、その一覧をそのまま出力して」。

1回で分かりました。

推測で2回外して、計測で1回で終わった

原因は、掴んでいた対象が目的のものではなかったことです。

私は目的の画面を掴んでいるつもりでいました。掴んでいたのは、まったく別の、表示を持たない裏方のものでした。だから「簡単な命令は受け付けるのに、画面に関する命令だけ永久に返ってこない」という、いかにも不可解な症状になっていたわけです。

一覧を出したら、名前を見た瞬間に分かりました。目で見れば一発です。

でも、推測では出てきませんでした。何時間考えても出てこなかったと思います。私の頭の中では「正しいものを掴んでいる」が前提になっていて、その前提そのものは候補に上がらないからです。

推測で潰していた時間と、状態を出力させた一手。差がついたのは頭の良し悪しではなく、情報の取り方の種類でした。

推測は、自分の地図の中しか探せない

原因を当てにいく作業は、自分の頭の中の地図を引く作業です。

地図に載っている場所は探せます。地図が間違っているときは、何回引いても出てきません。そして厄介なことに、地図が間違っているかどうかは、地図を見ても分かりません。

別の日にも同じ形で外しています。ある画面が真っ白になったとき、犯人候補を3つ挙げて表にすると、もっともらしい候補が並びました。

結果は3つとも無関係で、真因は候補表に1行も入っていませんでした。

このとき私がやるべきだったのは、候補を並べることではなく、「途中でエラーが出て止まっていないか」をその場で見にいくことでした。実際、後から見たら、処理は途中で止まっていました。見れば1行です。

未検証の推測を何個並べても、切り分けは1ミリも進みません。候補が増えると仕事をした気になりますが、増えているのは選択肢だけです。

「動いている証拠」に、動いていなくても存在するものを使わない

同じ件で、もう1つ外していました。

私は「この印が付いているから、中の処理は動いている」と判断しました。だから処理そのものは容疑者から外し、別の場所を探しました。

その印は、処理が動かなくても最初からそこに書いてあるものでした。処理が動いた証拠ではまったくなかったのです。証拠として無効なものを証拠にして、正解の方向を自分で消していました。

ここから引いたルールが1つあります。

動いている証拠には、動いていなくても存在するものを使わない。

事務仕事に置き換えると、こうなります。

・メールを出したかどうかの証拠に、下書きフォルダを見ない。送信済みを見る
・請求書を送ったかどうかの証拠に、作成したファイルの日付を見ない。相手に届いた記録を見る
・予約が取れたかどうかの証拠に、自分のカレンダーの予定を見ない。予約元からの確認を見る

どれも当たり前に見えますが、忙しいときほど、手近にある「あってもなくても同じもの」を証拠に使ってしまいます。

2回で手を変える、と回数で決める

そこで私は、感覚ではなく回数でルールを決めました。

1つの手法で2回失敗したら、その手法を続けない。3回目は手法を変える。

1回目 ── 試す
2回目 ── 同じ手法でもう一度だけ試す
3回目 ── 同じやり方を繰り返さず、情報の取り方ごと変える

回数だけで機械的に切り替えるのがこの図の要点で、「もう少しで分かりそうか」を判断材料に入れないのが肝心なところです。

なぜ回数で決めるのか。「もう少しで分かりそう」という感覚が、いちばん当てにならない計器だからです。

外し続けているときほど、その感覚は強くなります。ここまでやったのだから、あと1回で。その1回を10回やります。しかも時間を使えば使うほど、降りるのが難しくなります。降りた瞬間に、使った時間が全部無駄だったと認めることになるからです。

だから、降りる条件を先に決めておきます。感覚に判断させない。数えるだけにする。

私の場合、この2回ルールを書いてから、詰まっている時間そのものが短くなりました。粘りが足りなくなったのではなく、粘る場所が変わりました。

「手を変える」は、細部を変えることではない

ここで一番ごまかしが起きます。

同じ手法の細部をいじって「変えた」ことにしてしまうのです。押す場所を少しずらす、言い回しを変えて頼み直す、設定を一か所変えてもう一度回す。これは全部、同じ手法の3回目です。

変えるというのは、情報の取り方の種類を変えることです。

同じ手法の繰り返し ── 言い方を変えてもう一度頼む/位置をずらしてもう一度押す
手法を変える ── いま何を掴んでいるのか、その一覧をそのまま出力させる

上は「答えを当てにいく」やり方の反復で、下は「事実を取りにいく」やり方への乗り換えです。

種類を変える、の具体例をいくつか置いておきます。

・推測して潰す → 実際の状態をそのまま出力させる
・数値の検査 → 画面を目で見る
・自分で読んで確かめる → 機械に数えさせる
・自分の記憶で判断する → 原本を開いて確かめる

最後のものは、契約の話でやらかしました。自分の手元メモに書いてあった条文の番号を信じて資料を書きかけたら、原本を開いた瞬間に番号が違っていました。メモの方が間違っていたのです。以来、契約の話をするときは、原本を開いて自分で番号を確かめてから書くことにしています。

固まったら、まず画面を見る

これがいちばん高くついた教訓です。

ある作業で、画像を差し替える操作がどうしても効きませんでした。私は裏側の状態値だけを見て「効いていない」と判断し、別のやり方を延々と試しました。

真因は、確認用の小窓が開いていたことでした。その小窓が開いている間は、すべての命令が止まる仕様だったのです。適用ボタンを1回押せば終わりでした。

画面を1枚撮っていれば5分で終わっていたことに、3時間かけました。

以来、症状が「返事が返ってこない」「固まる」「タイムアウトする」のときは、原因を考える前に必ず画面を見ます。考えるのはその後です。

これは機械の話に見えて、人の仕事でもそのまま通ります。

・処理が終わらない → 進捗の予想を立てる前に、実行中の画面を開く
・返信が来ない → 相手の事情を推測する前に、送信済みを開いて実際に出ているか見る
・数字が合わない → 原因を考える前に、元の明細を1件ずつ出す

「返事がない」の第一容疑は、自分が見ていない場所で何かが待っていることです。相手ではなく、自分の視界の外側をまず疑います。

「保存した」を証拠にしない

同じ考え方を、出荷前の品質チェックにも入れました。

私は自分の商品ページをまとめて点検した日に、公開中のものから3件の実害を見つけています。

・編集用のメモ書きが、本文の先頭に載ったまま公開されていた
・ある記事の本文が、3重に貼り付いた状態のまま公開されていた。正しくは5万字ほどのものが、16万字になっていました
・価格が、書いてある金額と違う値のまま設定されていた

どれも「保存した」「公開した」の時点では、私の頭の中では完了していました。頭の中の完了と、実際に置かれているものが、静かにずれていたわけです。

だから今は、公開したあとに読み込み直して、実物の長さと重複と価格を数えます。目で全部読むのではなく、数えられるものは機械に数えさせます。

ちなみに、数値の検査が全部通ったのに見た目が壊れていた日もありました。欄からはみ出た文字が、本文の上に重なっていたのです。数値上は異常ゼロでした。「見る」以外の方法では見つからない不良は実在します。計測は万能ではなく、何を計測するかを間違えれば同じことになります。

AIに調べさせるときも、推測ではなく値を出させる

ここが、この記事でいちばん今日から使える部分だと思っています。

AIに「なぜ動かないのか教えて」と聞くと、もっともらしい候補がきれいに並びます。読むと納得します。

でも、外れている候補も、当たっている候補も、まったく同じ顔で出てきます。文章の説得力では区別できません。私が自分の頭でやっていた「推測を並べる」作業を、速く大量にやってもらっているだけです。

指示を変えると、返ってくるものが変わります。

・「原因の候補ではなく、いまの状態をそのまま出力してください」
・「その判断の根拠になった実際の値を、加工せずそのまま貼ってください」
・「一覧で出せるものは一覧で、数えられるものは数えて出してください」
・「分からない場合は分からないと書いて、確かめる方法を1つだけ提案してください」

最後の一文が地味に効きます。これを入れないと、AIは沈黙するより推測を書く方を選びがちだからです。

私は自分のAI秘書に「1つの手法で2回失敗したら、別の手法に切り替える」というルールをそのまま持たせています。人間に効くルールは、そのまま渡せば相手にも効きます。

見る道具が無いことが、事故の原因だった

最後に、正直に書いておきたいことがあります。

「実物を見ろ」と自分に言っても、見る道具が無ければ見られません。私が3時間溶かした日の本当の原因は、注意力ではなく、画面を確認する手段を持っていなかったことでした。

なので、状態を確認するための小さな道具を自分で作りました。既存の部品だけで組んだ短いもので、以後は毎回使えます。

ここの線引きは、こうしています。

・1回しか起きない詰まりなら、手で見る。道具は作らない
・2回以上起きた詰まりには、見る道具を用意する

計測にもコストがあります。毎回すべてを測っていたら仕事が進みません。測る対象を絞る基準が「2回以上起きたか」です。ここでも回数で決めています。

推測を減らすのは、考えないという意味ではありません。考える前に、事実を1つ手元に置く、という順番の話です。

順番を変えるだけで、私の場合は、詰まりの解ける速さがはっきり変わりました。

今日、ひとつだけやるなら

いま止まっている作業を1つ選び、原因の候補を挙げずに「いまの状態をそのまま出力して」という一文を、AIかその道具に渡してみてください。15分で終わります。


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この記事を書いた人

AI秘書と仕事を運用しています。

AI秘書のアリアと、製造役のもう1台のAIに、仕事の大半を渡しています。
私がやるのは、最後に決めることと、外に出す言葉を選ぶことです。

目指しているのは、稼ぐことそのものより、日々の面倒な確認や手戻りを減らして、家族と過ごす時間や休む時間を増やすことです。

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